【最新版】大学入試改革の現状について

大学入試が変わるポイントは大きく分けて4つになります。

大学入試が変わるポイントは
□センター試験が大学入学共通テストに代わる
□英語4技能外部試験のスコアを活用
□調査書の扱いが変わる
□AO・推薦入試の仕組みが変わる

が4つの柱になります。
1つ1つについて説明をしていきます。

センター試験が大学入学共通テストに変わる

1つ目のポイントとして、「センター試験が大学入学共通テストに変わる」ことについてお話をします。

「大学入学共通テスト」は以前に行われていた、「大学共通第1次学力試験」や現行の「大学入試センター試験」の流れを汲む試験として、2020年度(令和2年度)より導入される予定です。

大学入学共通テストは、高等学校教育の質の確保と向上を目的としているテストであり、出題される教科・科目は大学入試センター試験同様に6教科30科目となりますが、2024年度以降は簡素化の方向で考えられています。

この大学入学共通テストの大きな特徴としては下記の点でしたが、2019年12月17日に見送りとなっています。

記述式問題が導入される【実施見送り】

科目記述式問題内容
国語現代文にて30~120文字、3題程度の出題
数学Ⅰ数式を交えて説明、3題程度の出題

難易度は決して高くはないですが、記述式問題が入ることで時間が厳しくなる見込みでした。(特に現代文)

先述したように大学入学共通テストにおいての記述式は導入の見送りになりました。
その見送りの理由としては、

①採点精度の問題
2019年7月4日時点で本試験での採点者に大学生のアルバイトを導入することが検討されており、2019年8月30日に一般競争入札により、ベネッセグループ傘下でテスト採点を手がける学力評価研究機構が採点業務を行う事業者に決定しました。

しかし、採点基準から想定していない答えが出されることもあり、採点のぶれをいかに防ぐかが記述式問題導入の大きな課題でした。また、50万人が受験し、採点期間が約20日と短い大学入学共通テストの課題は山積みでした。

大学入試センターから採点業務を受注したベネッセグループの企業は約1万人体制で採点に当たる考えでしたが、「能力が十分な採点者を確保できるのか?」「正解・不正解の判断の統一性を保って公平な採点ができるのか?」という部分で不安視されていました。

②自己採点精度の問題
記述式問題の導入に伴い、受験生による自己採点が難しくなるのも大きな問題点でした。
特に現代文の記述式は、正答例などを読んで解答が正しかったかどうかを判断するのに読解力が必要であり、自己採点が難しくなります。
2018年に実施した共通テストの試行調査では、自己採点と実際の採点との一致率が国語で7割程度です。
国立大を目指す受験生らは自己採点の結果を基に出願先を決めますが、「自分の点数が何点なのか?」がはっきりしないことで、出願先の判断が困難になるという問題点がありました。

出題形式が変わる

①国語について
国語の試験時間はセンター試験では80分でしたが、大学入学共通テストでは記述式の導入が前提の際には試験時間が延長となり100分の予定でした。
ただし、記述式の見送りにより、試験時間は80分に戻りました。

出題内容の変更としては、実用的な文章が題材となります。
プレテストでは2回とも実用文が出題されました。

1回目は高校の生徒会の部活動規約。
生徒同士の会話文とアンケート結果など形式の違う資料がついた問題が出題されました。

2回目のプレテストでは著作権について書かれたポスター、著作権法の条文、さらに著作権についての論説文から出題をされました。

これまでのセンター試験とは大幅に異なる形式で出題がされる予定です。

②英語について
大学入学共通テストでは、英語試験が大幅に変わります。


《英語の変更点一覧》

英語試験の比較センター試験
2019年度
大学入学共通テスト
2018年11月プレテスト
筆記試験時間・配点80分
200点
80分
100点
問題冊子26ページ29ページ
小問数54問43問
問題文日本語英語
リスニング試験時間・配点30分
50点
30分
100点
問題冊子10ページ20ページ
小問数25問37問
音声回数全問「2回」第1~3問:2回
第4~6問:1回
解答方法選択肢から1つ選ぶ正しいものをすべて選択

□英語の配点が変わる
 英語の筆記試験がセンター試験の200点満点→100点に変更になり、リスニング試験が50点→100点に変更になります。

□筆記試験の設問がすべて英語になる
 設問がセンター試験では日本語でしたが、共通テストでは英語になります。

□発音・アクセント問題がなくなる
 現行のセンター試験では、発音・アクセント問題、語句の並び替えなどが大問1で出題されていますが、共通テストではなくなることが確定しています。

□単語量増加に伴い、難易度が上がる
 読解量・単語の量は共通テストだと大幅に増える見込みです。
 2019年のセンター試験では約4200語。共通テストのプレテストでは約5400語と大幅に増えています。
 単語の量が増えたからと言って、必ずしも難易度が上がるわけではないですが、現状の高校生の学習姿勢を鑑みると難易度は上がるのではないかと考えられています。

□リスニングが1回読みになる
 センター試験のリスニングは問題文を2回読みますが、共通テストでは2回読みと1回読みの両方で構成されます。
 配点が倍になり、リスニングの1回読みという難易度が上がることを考えると、共通テストでのリスニングの比重が高くなると言えます。1回読みの部分に関しては英検2級レベルでの対応は難しいと言われています。

③数学について
共通テストのプレテストでは身近なテーマについて問題文を読ませた、その上で数学の知識を必要とする設問が出題されました。
問題文自体が長く、内容を把握するのに時間がかかり、時間内に全ての問題に手が回らない生徒も多かったようです。
共通テストの狙いの一つである思考力が問われ、数学なのに「国語力」が多く問われた出題になっています。

英語民間試験のスコアを活用する

【国立大学では見送り多数】
大学入試改革の大きな目玉の一つであった、英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送りました。

英語民間試験活用の見送りを受け、国立大学は2021年度(令和3年度)入試における英語民間試験活用の有無を公表しましたが、一般選抜における出願要件や加点等の独自利用において、国立大学82大学のうち73大学で活用を見送ることになりました。
9割の国立大学が活用を見送りましたが、1割の大学では活用をします。
活用方針と活用大学は以下になります。

大学学部活用方法
千葉大学一部の学部・学科 個別学力試験「外国語」の得点に換算
東京海洋大学 海洋生命科学部
国際資源環境学部
出願資格
九州工業大学全学部 共通テスト「外国語」の得点に加点
佐賀大学全学部共通テストと民間試験の成績で高得点の方を利用
長崎大学多文化社会学部共通テスト「外国語」の得点を満点とみなす
鹿児島大学共通テスト
「外国語」試験を課す
学部学科
共通テストの英語筆記の得点が80%以上の時→満点とみなす
80%未満の時→得点の25%の点数を加点
英語リスニングも同様
宮崎大学工学部(前期日程)個別学力検査「英語」の試験を免除し満点とみなす
大阪教育大学①小中教育専攻
 中等教育専攻英語教育
コース
②グローバル教育専攻
英語コミュニケーション
コース
①共通テストの得点に加算
②共通テストと個別試験の「外国語」の得点が満点になるまで加算
琉球大学医学部医学科以外の
学部学科
共通テストの英語試験の得点に加点

【私立大学は積極活用】
私立大学は国立大学と対象的に積極的に外部試験を積極的に活用をする方向性になっています。
ただ、私立大学においても積極活用する大学と、消極的な大学にも分かれます。主な活用例を下記にまとめます。

大学名活用
スタイル
活用方針
上智大学積極的すべての受験方式において英語外部試験の資格・スコアを入試得点に加算
青山学院大学積極的ほぼすべての学部とその入試方式で英語外部試験を利用
立教大学積極的学部独自入試では英語外部試験のスコアが英語の得点になる
成蹊大学積極的すべての学部個別試験において資格・スコアを入試得点に加点
武蔵大学積極的英語外部試験の資格・スコアの「提出」が必須化
※全学部統一グローバル2科目型についてのみ英語外部試験の資格・スコアを加点
慶應義塾大学消極的導入無し
学習院大学消極的国際社会化学部プラス試験に限り利用
獨協大学消極的法学部2科目入試(A方式)及びセンター利用入試英語試験での英語外部試験資格
スコア利用
早稲田大学一部導入□国際教養学部
学部個別試験において資格・スコアを入試得点に加点
□政治経済学部
学部個別試験において資格・スコアを入試得点に加点
□商学部
新設される英語外部試験利用入試にて30名程度の枠を設置
出願資格として英検準1級以上またはTOEFL-iBT 72点以上の基準を満たす必要
□文化構想学部
英語4技能利用型の一般入試枠を新設
国際基督教大学一部導入□教養学部
一般方式B方式にて10名程度の枠を設置
出願資格
① IELTS(6.5 以上) ② TOEFL(iBT79 以上) 
③ Cambridge English(175 以上)
④ GTEC 4 技能版) CBT タイプに限る (1300 以上)のいずれかを満たす必要がある
中央大学一部導入□経済学部
英語外部試験利用入試にて資格・スコアを出願資格化
CEFR A2以上を満たす必要がある。
共通テスト利用入試では、英語外部試験のスコアが得点換算され合格判定に用いられる
□商学部
英語外部試験利用入試にて資格・スコアを出願資格化
CEFR B1以上を満たす必要がある
□文学部
英語外部試験利用入試にて資格・スコアを出願資格化
学科によって異なる数値のうえ、CEFR換算ではなく具体的な得点が課されているため
受験を検討する際は要確認
□総合政策学部
共通テスト利用入試にて資格・スコアを出願資格化
CEFR A2以上を満たす必要がある
学部独自入試にて、独自入試の得点のみで合否判定が出る方式と、
学部独自試験+英語外部試験のスコアを得点に加算した合計点で合否判定を行う方式を用いる
□国際経営
英語外部試験利用入試にて資格・スコアを出願資格化
CEFR B1以上を満たす必要がある
□国際情報
英語外部試験利用入試にて資格・スコアを出願資格化
概ねCEFR B1以上を満たす必要がある
法政大学一部導入GISの共通テスト枠、英語外部試験利用入試枠において、資格・スコアが出願資格化
國學院大學一部導入全学部…共通テスト利用入試でCEFR A2以上を出願資格化
駒澤大学一部導入全学部統一日程及びGMS S方式にて英語外部試験のスコアを利用
共通テスト利用入試では英語外部試験のスコアは用いられない。
関西学院大学一部導入全学部
オプションとして英語外部試験の資格・スコアを利用可
関西大学一部導入現行の入試制度を踏襲し、一部入試制度において英語外部試験のスコアを出願資格とする
あるいは外国語を満点として取り扱い合否判定を行う
立命館大学一部導入共通テスト枠については従来の特例措置を継続するのみ
一般入試に関しては不明
日本女子大学一部導入一般入試制度の英語外部試験利用型において4技能試験を用いる
東京女子大学一部導入一般入試制度の英語外部試験利用型において4技能試験を用いる

 私立大学は大学によっての対応が異なりますので、大学ごとの入試要項を必ずご確認ください。

CEFRによる各試験の語学レベル

目的も試験方法も違う英語民間試験を大学入学共通テストに取り入れるにあたり必要となるのがCEFR(セファール)になります。
CEFRは「Common European Framework of Reference」の頭文字をとったもので、日本語訳をすると
「ヨーロッパ共通参照枠」になり、言語能力の習熟度の指標として使われています。

CEFRには等級があり、A1からC2の6段階で表されます。

段階CEFR熟達度
熟達した
言語使用者
C2自然に、流暢かつ正確に自己表現ができる。
熟達した
言語使用者
C1複雑な話題について明確で、しっかりとした構成の詳細な文章を作ることができる。
自立した
言語使用者
B2幅広い話題について、明確で詳細な文章を作ることができる。
自立した
言語使用者
B1身近な話題や個人的に関心のある話題について、
筋の通った簡単な文章を作ることができる。
基礎段階の
言語使用者
A1簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄について、
単純で直接的な情報交換に応じることができる。
基礎段階の
言語使用者
A2相手がゆっくり、はっきりと話して、助けが得られるならば、
簡単なやり取りをすることができる。

主に異なる英語の検定試験を受けた時に同じ尺度で能力を判定するために使用します。
文部科学省から判断のための対照表は以下になります。

文部科学省による対照表

この表を参考にするころで、異なる検定でもおおよそのレベルを確認することができます。
大学の入試要項の出願条件や加点条件に「CEFRでB1以上」との記載があった場合は上記の表で確認をし出願をすることになります。
私立大学の積極活用もあるので、検定取得は計画的に行う必要があります。

どの外部試験を利用するのか?

旺文社の調査によりますと、「外部試験を利用する」と答えた人の9割が英検の受検を検討しています。
GTEC等他にも2020年からの評価に認められていますが、圧倒的に英検を利用しようとしている生徒が多いということが現状になります。
ビジネスマン向け、留学生向けの検定試験がある中で、大学受験の観点から考えた場合には「英検」が親和性が高いと言えます。

調査書の扱いが変わる

「学力の3要素」をご存知でしょうか?
学力の3要素は生徒が新しい社会を生き抜くために育てるべき力として3つの要素の設定がされ、それを総合して「生きる力」と規定しています。
主な要素は次の3点です。

要素1.知識・技能
教育現場で教えようとしている「生きる力」の最初の要素は「知能・技能」の習得になります。
「知識・技能」は「何を理解しているのか、何ができるのか」を示すものであり、学力の3要素の土台になります。

要素2.思考力・判断力・表現力
2つめの要素は知識・技能の上に築かれる「思考力・判断力・表現力」です。
要素1の「知識と技能」を土台にし、未知の状況にも対応できる力を養うことが目的になります。

要素3.主体性・多様性・協調性
そして2つの土台の上に作られるのが、学びを人生や社会に生かそうとする「主体性・多様性・協調性」です。この要素は「どのように社会と関わり」、「より良い人生を送れる力を身につけられる」ようにするものです。

知識・技能をもとにし、思考力・判断力・表現力を使って情報をもとに自分の考え方を作り上げ主体的に学び、さまざまな考え方を理解したり、多様な方法で自分の考えを表現してグループとしての意見を形成したりといったことが含まれます。

今回の入試改革において、知識・技能は学びの基礎診断を使用し、思考力・判断力・表現力として大学入学共通テスト、主体性を見るものとして、調査書を扱うことになります。